Overview

取り組んだ内容

  • 企業理念策定
  • コーポレートサイトリニューアル
  • 撮影ディレクション
  • オフィス内装デザインのディレクション

Approach

イントロダクション

フライングフィッシュ株式会社は、食品輸送を中心にした国際複合一貫輸送サービスを提供している会社です。海上輸送をはじめ、飛行機、鉄道、トラックまでさまざま輸送手段を用いて、コンテナ配送や通関といった国際物流の取り次ぎ業務を行っています。高度化、多様化、複合化する国際物流において、これまでに培ってきたノウハウとグループ会社のネットワークを最大限駆使し、商社やメーカーなど、さまざまなクライアントに対して最適かつ高品質な物流サービスを提供しています。

さらなる成長と飛躍を目指すリブランディング

会社設立から10年目を迎える2022年春、フライングフィッシュは基幹システムの刷新を皮切りとする全社規模のDX推進に着手していました。この大きな挑戦の中で、経営陣は会社としての新しい姿をかたちにすることの必要性を感じていました。さらなる成長と飛躍を目指すためには、社員全員が一体となって同じ目標に向かっていけるような自分たちのブランドを形成する必要があったのです。私たちはDX推進を支援していた株式会社Fabeeeから声をかけていただき、デザイン支援として企業理念の策定とコーポレートサイトのリニューアル、オフィス内装デザインのディレクションを行いました。

1.5ヶ月の短期間で実施した企業理念策定プログラム

フライングフィッシュにはこれまで企業理念がなく、前身のフライングフィッシュサービス株式会社から受け継がれてきた価値観や、親会社である内外トランスライン株式会社の企業理念に準拠するようなかたちで業務が行われていました。これまで何度か自分たちの企業理念を定めようと試みてきましたが、実現には至っていない状況でした。

DXを推し進めていく中で、社内には従来の価値観にとらわれずに新しいものを積極的に受け入れていく文化が醸成されていく一方で、自分たちは何を守り、何を新しくするべきなのか、これからどこを目指していくのか、という問いが生まれていました。私たちは社員全員で共有する“想い”としてかたちに残すことがその問いの答えになると考え、企業理念策定のプログラムを実施しました。

私たちのプログラムは、ステップ1として経営者の主観的願望から「コア」を導き出すところからスタートします。そしてステップ2としてその「コア」を「Mission(自分たちの達成したい社会的役割)」へと変換し、さらに「Vision(自分たちの見たい未来像)」を考えていきます。最後のステップ3として、自分たちの「らしさ」や「強み」を考えることで、Missionを成し遂げるために必要な「Value(大切にしたい価値観)」を定義してきます。

今回のフライングフィッシュの企業理念もこのステップで検討を進めていきました。通常このプログラムは約3ヶ月の期間で行いますが、今回は1.5ヶ月という短い期間で完了させる必要がありました。そのため、対面で2日間の集中セッションを行い、その後オンライン対話を行うという2段階のアプローチを計画しました。代表の植木氏をはじめとした経営陣3名と社員代表の3名、そしてそしてDX推進をリードしてきたFabeeeの冨塚氏の計7名でチームを結成し、検討を行っていきました。

集中セッション1日目

集中セッション1日目は、フライングフィッシュの「コア」は何かを考え、それらをMissionとVisionに落とし込むことを行いました。「コア」とは組織を成り立たせている核(芯)です。経営者個人の主観的な願望、エネルギーの源泉(ソースオブエナジー)から生まれるコアは、恒久的に変わらない組織の存在理由であり、時代に影響されない不変の想いであり、代替不可能な存在です。私たちは経営陣にさまざまな問いを投げかけながら、コアの輪郭を浮かび上がらせていきました。

撮影場所:SPACES新宿

フライングフィッシュのナラティブ

私たちは対話の内容をフライングフィッシュのナラティブとして図に落とし込んでいきました。その結果、フライングフィッシュのコアは、自分たちの仕事によってお客様や生活者の中で生まれる「ありがとう」の言葉であるということが判明しました。

私たちはフライングフィッシュのコアから、企業理念のMissionを考えていきました。また、Mission実現の先に訪れる未来としてのVisionは何かを考えました。そして最後に全員で投票を行い、MissionとVisionの大まかな方向性を決定して、1日目は終わりました。

集中セッション2日目

集中セッション2日目は、1日目に決まった Mission/Visionの案に対して再び問いを与えながら、内容の精緻化を行いました。フライングフィッシュの理念の体系は、まず自分たちの役割としてのMissionがあり、それを遂行するために進んでいくミッション先行型の「MVV型」に決定しました。そしてVisionは「Mission達成のための具体的なマイルストーン」として、具体的な年を指定しない「ありたき状態」として定義することが決まりました。

その後、自分たちがこだわってきたこと、これまで発揮してきた強み、顧客から評価されていることを上げ、それらをグループに分けて整理すると、大きく7つの項目が浮かび上がりました。私たちはそれらを、自分たちが大切にしたい価値観と、フライングフィッシュの社員としてとるべき行動指針としてValueに落とし込んでいきました。

撮影場所:SPACES新宿

オンライン対話

集中セッションの後に2回にわたって行われたオンライン対話では、Mission / Vision / Value のワーディングの検討を行いました。さらに親会社の内外トランスラインの企業理念とのハレーションや、現在の事業内容と組織体制との整合性や拡張性など、新しい企業理念を運用していく上で生じる問題がないかの検証を行いました。

フライングフィッシュの新しい企業理念

プログラムを経て、フライングフィッシュの新たな企業理念は決まりました。Missionは「世界中にモノを運び、ありがとうで繋ぐ」です。フライングフィッシュは迅速かつ効率的に世界中にモノを届けることで、クライアントから『ありがとう』と言ってもらえるような物流サービスを提供することを目指しています。そして運ぶモノに込めたクライアントの“想い”まで一緒に届けることで、生活者の間にも『ありがとう』が広がることを目指しています。私たちはこの『ありがとう』の循環を「サンクスチェーン」と名付け、そのサンクスチェーンで世界中を繋いでいくことこそが、フライングフィッシュのMissionであると定めました。

そしてVisionは「人智とITのハイブリッドで、お客様の心に届く物流サービスを」です。DX推進をはじめとしたITの利便性、効率性と、創業当初から育まれてきた人智を掛け合わせた、付加価値の高いサービスの提供を実現している状態がフライングフィッシュの描くVisionです。

Valueは、これまでフライングフィッシュが大切にしてきた価値観と、具体的な行動指針を、社名の由来でもある「トビウオ」の特徴になぞらえた7つの項目として定義しました。

私たちはこの企業理念策定までの過程を、会社のアセットとして残すことができるように、ひとつのレポート資料としてまとめました。

未来への船出としてのコーポレートサイト

次に、フライングフィッシュの新しいビジュアルアイデンティティを表現するメディアとして、私たちはコーポレートサイトの全面的なリニューアルに取り組みました。新たに策定したVisionの「人智とITのハイブリッド」をデザインのコンセプトとして、これまでのブランドイメージとは異なる鮮やかなブルーやグリーンを採用することで、DX推進に取り組む先進的かつ挑戦的な企業のイメージを表現しました。全体のレイアウトは、港に積まれているコンテナをイメージして、“BENTO”と呼ばれるグリッド上に要素を配置するデザインを採用しました。その要素の中に、BIツールのダッシュボードのような、実際の取引実績データなどを表示させることで、フライングフィッシュがデータドリブンで経営を行っていることを表現しました。トップページのキービジュアルには、実際に船が経由する世界12都市の港の風景を、天気や気温とともに表示させました。サイトリニューアルに合わせて、ボードメンバーのポートレートやメンバーが働く様子の写真も新たに撮影を行い、世界観の統一とブランドイメージの向上を図りました。

おわりに

今回のプロジェクトでは、私たちが組み上げてきた企業理念策定のプログラムを、通常よりも短い期間で実施して成果へと結びつけるという、非常に挑戦的な機会となりました。この経験を通じて得られた学びを活かし、さらにプログラムの精度を高めていきたいと思います。

また、セッションを通じて、私たちが普段何気なく購入している海外の食品などが、フライングフィッシュのような取り次ぎ業務を行う人たちの日々の努力によって支えられていることを知りました。そして物流のプロフェッショナルである彼らが、“変わらなければ明日はない”という想いで新たな挑戦を続けている姿にとても感銘を受けました。

フライングフィッシュという企業が新たな未来に向けて進んでいく、その記念すべき船出に立ち会えたことを光栄に思います。私たちはこれからもフライングフィッシュの航海を支えていきたいと思います。


Overview

取り組んだ内容

  • 企業の存在価値や姿勢を反映したビジュアルアイデンティティの開発

Approach

イントロダクション

ボクシーズ株式会社はソフト&ハードウェアテクノロジーを駆使してGood UXを産み出し、社会課題を解決していくUXイノベーション・カンパニーです。その事業領域は、飲食・見守り・観光・オフィスなど多岐に渡ります。戦略立案、コンサルティング、UIデザイン、ソフトウェア、デバイス(IoT)の知見を統合し、高いゴール=ユーザーの感動・喜びへと結実させることで、社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。開発したプロダクトに応じて事業会社を設立し、各事業会社で他企業と資本業務提携を行うことで、創出したビジネスをさらに加速させています。

プロジェクトチームに参加

ボクシーズと私たちとの出会いは2007年に遡ります。通信キャリアの新規事業でプロトタイプのデザインをご依頼いただいたことがきっかけでした。

その後の2014年には、ボクシーズが開発したGPSの電波が届かない場所でも位置情報を取得できるサービス「TAGCAST」のブランディングデザインをご依頼いただきました。

そして設立17期目を迎える2022年7月、ボクシーズが進むべき方向性を改めて定義した上でビジュアライズを行うという、コーポレートブランドリニューアルプロジェクトが立ち上がりました。私たちはデザインコンサルティングとして声をかけていただき、チームに参加しました。

コーポレートアイデンティティ

チームは実利的価値、情緒的価値、感性価値、共鳴価値の4つからボクシーズのブランドの提供価値を考えていました。そこから『テクノロジーを駆使して「心に響くユーザー体験」を産み出し、社会課題を解決する』というコーポレートアイデンティティを導き出しました。私たちはそれらを表現するビジュアルアイデンティティの検討をはじめました。

アウトプットとして求められたものは以下の4つでした。

  • 協賛・提携でロゴが並んだときに、たとえグローバル企業の中にあっても見劣りしない品質と品位を確保すること
  • より洗練されたフォルムと鮮やかなカラーにすること
  • ひと目見て覚えられるようなシンボルマークにすること
  • チームで考えたアイデアの、ボクシーズを端的に表した「BXシンボル」を検証すること

新しいビジュアルアイデンティティ「BXシンボル」と「BXアロー」

いくつかのデザイン検証を経て、新しいビジュアルアイデンティティは決定しました。

シンボルマークの「BXシンボル」は、ボクシーズが社会の未来に向けて前進する姿を表した「BXアロー」を2つ組み合わてBとXを形作っています。「BXアロー」は、ボクシーズの新しいタグラインである「UX >> INNOVATION」にも展開させています。

ロゴタイプはオリジナル書体をデザインしました。中央のXの文字は「BXアロー」をイメージし、矢印の形状2つから構成されています。読みやすくシンプルでありながらも、落ち着きと安定感を感じさせるプロポーションにしました。

カラーも、ボクシーズの伝統であるこれまでのブルーを継承しつつも、新世代を感じさせる鮮やかな「BXブルー」へと進化させました。

私たちはその後、新しいビジュアルアイデンティティに合わせて、名刺の制作やグラフィックシステムの開発、コーポレートサイトのリニューアルなどを行っていきました。

おわりに

2023年7月、ボクシーズが2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)シグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」に協賛することを発表しました。大企業の中にあっても見劣りしないロゴ、という目標が実現した瞬間でもありました。

 

 

社会の未来に向けて前進を続けるボクシーズを、私たちはこれからも支援して参ります。