思いに宿り、共生する。情報発信を言葉で支える企業のブランディングデザイン
宿木屋
- Client
- 株式会社宿木屋
- Period
- 2023.5 - 2022.11
- Expertise
Overview
取り組んだ内容
- 編集プロダクションのコーポレートブランディング
- 新しい定義を伝えるためのコーポレートサイト
Approach
イントロダクション
株式会社宿木屋は企業の言葉に関わる業務を支援する編集プロダクションです。代表の宿木雪樹氏は2017年からフリーのWebライターとして活躍し、2020年に宿木屋を設立。取材、執筆、編集を掛け合わせたオーダーメイドの解決策を提案しています。本質的な課題は何かという問いを常に考えながら、もっとも伝わる言葉を紡ぎ出します。
ライター集団から、編集プロダクションへ
私たちはパートナーとしてすでにいくつかのプロジェクトを共に行っていました。代表の宿木氏からは、これまでのライター集団のような見え方から、企業の情報発信を言葉で支える編集プロダクションとして自社を再定義したいと相談をうけました。新たなライターの雇用や事業拡大に向けた基盤を形成するため、全面的なリブランディングを行うことになりました。
宿木屋のアイデンティティを考える
私たちはまず宿木屋のアイデンティティは何かを掘り下げていきました。高いコンセプチュアルスキルとプロフェッショナリズムによる言語化が特徴である彼女たちを表現するベストな方法は何か。私たちは宿木氏のライティングネームでもあり、社名にも使われている「ヤドリギ」という言葉の意味を解釈し直すことで、いくつかの方向性へと落とし込み、提案を行いました。
そして“共生”というコンセプトが生まれました。宿木屋が企業と共に未来へと進んでいく姿を、ヤドリギという植物が樹木の枝や幹に寄生し、水分や栄養分を分け与えてもらいながら共に成長していく姿と重ねました。
CIの書体は木の幹や棒を組み合わせたような形状をしており、平ペンのカリグラフィーのような太さの変化を付けました。コーポレートカラーは、植物や大地などの自然からイメージされたカラーパレットで構成しています。そしてイラストや写真などのブランドビジュアルも、大地や自然の風景をモチーフにしました。これらは、ヤドリギという植物のイメージであるのと同時に、宿木屋という企業が、都心ではなく札幌を中心とした地方のネットワークによって形成されていることを表しています。そして女性が中心の会社であるため、全体のトーン&マナーにも優しさや繊細さが感じられるようにしました。
共生の象徴、“Yモジュール”
自然や女性らしさだけでなく、宿木屋が力強く論理的に問題解決に取り組む企業であることを表現するため、私たちはアイデンティティの中にロジックの要素を取り入れました。
それがヤドリギの枝葉と宿木のイニシャルのYを掛け合わせた独自の形状“Y(Yadorigi)モジュール”です。Yモジュールが複数集まって円を形成したものがシンボルマークであり、まさにヤドリギ本体を表現しています。
またYモジュールはシンボルマークだけでなく、パターンやタイポグラフィとしても機能します。宿木屋の専用書体“Yフォント”は、Yモジュールが複数集まってアルファベットを形成したものです。YフォントはYモジュールの密度によってウェイトの展開をすることが可能です。
新しい定義を伝えるためのコーポレートサイト
私たちは次にコーポレートサイトのリニューアルを行いました。編集プロダクションという新しい定義をこれからの顧客やパートナーに対してどのような構成や表現で見せていくべきかを検討しました。私たちはまずは企業理念と事業内容を整理するところから始めました。宿木屋自体が言葉のプロフェッショナルであるため、私たちはそれらをWebサイトのターゲットや目的に沿うように再整理したり、図式化を行うことで、より機能的にすることに務めました。表現としても、ブランディングのトーン&マナーを引き継ぎながら、リズム感のあるレイアウトや見出しのYフォントがランダムに変化するアニメーションなどを取り入れることで、Webサイトとしての驚きを感じられるものにしました。
おわりに
リニューアルの後、代表の宿木氏からはコーポレートサイトのお問合せを通じて新しいお客様との出会いがあったとのご連絡をいただきました。企業を言葉でサポートし、共に未来へ進んでいく宿木屋を、私たちはこれからもデザインで支援していきたいと思います。
私自身が気付いていなかった自社らしさを体現するリブランディングをしていただけたと感じています。そのプロセスでは真摯なコミュニケーションを取ってくださり、うまく言語化できない「こうしたい」を紐解いてくださったことが印象的でした。リブランディング後、新しいお客様との接点をこのコーポレートサイトから生み出せていることも含め、感謝しております。気持ちを新たに、新しいブランドを育んでいけるよう挑んでいきたいです。
宿木雪樹 株式会社宿木屋 代表取締役
Credits
アートディレクション: 橘友希
PM:宇佐見優
CIデザイン、ウェブデザイン: 濵田佳仁
マークアップ: 伊藤祐太