ブランディングは「見た目」ではなく「判断軸」をつくる仕事です

入門・定義

ブランディングという言葉を聞いたとき、多くの方がまず思い浮かべるのは、ロゴやデザインのことではないでしょうか。

それは間違いではありませんが、本質ではありません。

ブランドとは、連想の積み重ねです

近すぎず、遠すぎない。相手の文脈を尊重しながら、必要なときにははっきりと提案する。そのバランスがパートナーシップの土台になります。

ブランドとは、「ある企業や製品の名前を聞いたとき、人の頭の中に自然と浮かぶイメージの総体」と言われています。そのイメージは、企業の行動という文脈が積み重なって生まれます。サービスの内容、顧客との接し方、採用の仕方、何をやらないか、何にこだわるか。ブランドとは、そうした一つひとつの文脈を蓄えていく器のようなものだと思います。

私たちは20年間、さまざまな企業のブランディングに関わる中で、あることを繰り返し見てきました。

ブランドが機能している企業では、日常の判断の速度と精度が変わります。

採用面接で「この人はうちに合うか」を、感覚ではなく「自分たちの価値観と重なるか」で判断できる。新規事業の検討で、「これをやるべきか」に「自分たちらしいか」という基準が生まれる。取引先へのプレゼンで、伝えるべき強みがぶれなくなる。

これは抽象論ではありません。私たちがクライアントの隣で実際に見てきたことです。ブランディングとは、企業の中に「判断軸」をつくる仕事なのだと、私たちはそう理解しています。

「正しいか」ではなく「らしいか」

ブランディングにおいて、「正解」はありません。

この施策が正しいのか、このデザインは正しいのか。そういった問いの立て方は、ブランドには馴染みません。問うべきは「らしいか」です。自分たちの哲学と一致しているか。自分たちが大切にしてきたことと、矛盾していないか。

そして、「らしさ」は変化するものです。

人が成長とともに価値観や表現が変わるように、企業も事業の拡大や組織の変化とともに、「自分たちらしさ」の輪郭が少しずつ変わっていきます。10人のときの「らしさ」と、100人になったときの「らしさ」は、完全に同じではありません。それは当然のことだと思っています。

私たちShedは、スタイリストのような存在と近いところがあります。中身を直接的に変えることは私たちにはできません。でも、今の中身の良さを最大限に引き出し、それが社会に伝わる形にすることはできます。今のベストを描き出し、これから向かうべき方向性も示す。今すべてが揃っている企業などありません。どんな企業にも伸びしろがある。だからこそ、良いタイミングで「らしさ」を問い直し、更新するお手伝いをしていきたいと思っています。

すべては「コア」から始まります

「らしさ」が変化する中でも、変わらないものがあります。それが組織としてのコアです。

コアとは、組織を成り立たせている核(芯)のことです。経営者個人の主観的な願望、エネルギーの源泉。ソースオブエナジーともいえるその力は、時代に影響されない不変の想いであり、その組織にしかない存在理由です。組織の規模が変わっても、時代が変わっても、コアは変わりません。ブランディングとは、まずこのコアを明らかにし、そこから「今の自分たちらしさ」を言語化し、形にしていく作業です。だからブランディングは、一度やったら終わりではありません。コアは変わらなくとも、その表現は更新され続けます。

あるプロジェクトの事例をご紹介します。国際物流を手がけるフライングフィッシュ株式会社とのブランディングでは、代表の植木氏をはじめとした経営陣と対話を重ねる中で、彼らのコアが「ありがとう」という言葉に宿っていることが見えてきました。世界中にモノを運ぶことで生まれる「ありがとう」の連鎖。それが彼らの仕事の根幹にある想いでした。そのコアから、新しいミッション「世界中にモノを運び、ありがとうで繋ぐ」が生まれ、コーポレートサイトのデザインも、オフィスの内装も、すべてがその想いを体現する形で整えられていきました。

コアが定まると、その後の判断がすべて変わります。「これはコアと一致しているか」という問いが、社内のあらゆる決断の基準になるからです。

Shedのブランディングプロセス

この考え方を、Shedは4つのステップとして実務に落とし込んでいます。

Step 1 コアを掘り下げる:経営者・ステークホルダーとの対話を通じて、組織の核となる想いを浮かび上がらせます。

Step 2 らしさの言語化:コアをもとに、判断軸そのものを見極め、言葉として定義します。

Step 3 らしさの視覚化:言語化された判断軸を、CI・Webサイト・各種ツールとして、デザインの形に具体化します。

Step 4 仕組み化:実装した後も、社内で運用・内製化していけるよう、体制や仕組みづくりまで支援します。

ブランドは、すべての企業活動に影響します

ブランドが機能すると、採用・営業・事業開発だけでなく、組織のあらゆる場面が変わります。

社内のコミュニケーションが変わります。「自分たちはなぜこれをやるのか」という問いに、全員が同じ言葉で答えられるようになります。

顧客との関係が変わります。「この会社に頼みたい」という選ばれ方が、価格や機能だけでなく「らしさ」で生まれるようになります。

組織の成長が変わります。人が増えても、チームが分かれても、「自分たちらしさ」という軸が共有されていれば、方向性がぶれにくくなります。

ブランドは広告やデザインの話ではなく、経営の話だと私たちは考えています。

ブランディングの始め方

ブランディングを始めたいと思ったとき、多くの企業がまずロゴやウェブサイトのリニューアルから入ろうとします。それは入口として間違っていませんが、その前に向き合うべき問いがあります。

「自分たちは今、何者で、どこへ向かおうとしているのか。」

この問いに対する答えが曖昧なまま、見た目を変えても、ブランドは機能しません。外側が変わっても、内側の判断軸が定まっていなければ、また同じ問いに戻ってきてしまいます。

Shedは、この問いに向き合うところから始めます。経営者の想いを対話を通して丁寧に引き出し、それを言葉と形に変えるところを一緒に担います。

ブランディングとは、見た目をつくる仕事ではありません。判断軸をつくり、それを社会に伝わる形にする仕事です。