ブランディングを始めるべきタイミングと、フェーズ別の投資の考え方
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スタートアップ・ベンチャー向け

「ブランディングは、余裕ができてからやるものだ。」
多くの方がそう思われているかもしれません。今はプロダクトを作ることで精一杯。ブランドは、人が増えてから、資金調達ができてからでいい。そう考えるのは自然なことだと思います。
私たちも、無理に早くから見た目を整える必要はないと思っています。ロゴ一つとっても、最初からお金をかけて凝ったものを用意する必要はありません。
大切なのは、タイミングの見極めです。
ブランドを見直すタイミング
多くの企業が、今の状態に特に疑問を感じないまま、日々の事業を続けています。
ただ、いくつかのサインが重なったときは、ブランドを見直すタイミングかもしれません。
売上の伸びが鈍っている。競合と比較されたときに、違いをうまく説明できない。採用で、思うように候補者からの反応が得られない。若手社員から「もっと見た目を良くしたい」という声が出ている。社内のメンバーごとに、会社の魅力を語る言葉がバラバラになっている。
一つひとつは、それぞれ異なる現象に見えるかもしれません。しかし、これらが重なって出てくるとき、ひとつの同じ問題に根ざしています。
会社の見え方が、今の実態からも、これから目指す姿からも、少しずつずれ始めている。それがブランドを見直すタイミングです。
フェーズごとに、ブランディングの役割は変わります
ただ、そこで何を整えるべきかは、会社がどのフェーズにいるかによって変わります。
「検証期(PoC)」では、向き合う相手は主に採用候補者と投資家です。まだ売るものが形になっていない中で、大切なのは「見た目の完成度」ではなく、自分たちの理念や事業の可能性を、正確に、そして魅力的に伝えられるかどうかです。ここでのブランディングの役割は、信頼と期待を積み上げることに近いと思っています。
プロダクトが形になり、「立ち上げ期」に入ると、ブランディングの役割はプロモーション寄りに変わります。法人向けのビジネスであれば、ゴールは見込み顧客からの問い合わせです。個人向けのビジネスであれば、ゴールは認知とユーザー獲得です。
会社が急成長し、「拡大期」に入ると、また違う課題が出てきます。人が増え、拠点が増え、気づけば「らしさ」がバラバラになっていく。ここでのブランディングの役割は、広く伝えることよりも、社内に向けて「自分たちらしさ」を一つに束ね、浸透させることです。
そして、上場やM&Aを視野に入れる「成熟期」になると、向き合う相手は株主やメディア、社会全体に広がります。ここで問われるのは、共感よりも実在感や信頼性です。

適切なタイミングで、適切な投資を
ブランディングを短期的なコスト意識だけで判断すると、効果が見えにくく、後回しにされがちです。
しかし、ブランディングの効果は、短期の指標では測りにくい形で積み上がっていきます。一度つくった判断軸は、その後何年にもわたって、ロゴや言葉として、採用資料にも、営業資料にも、Webサイトにも、名刺にも、あらゆる接点で繰り返し使われ続けます。広告のように、出稿を止めた瞬間に効果が消えるものではありません。
私たちが手がけた株式会社ABEJAのリブランディングでは、経営陣との対話を通じて、「テクノプレナーシップ」というブランドの軸となる考え方を言語化しました。そこから「ABEJA Grid」という一つの規則を定義し、そのルールに沿って複数のロゴを展開。専用書体「ABEJA Sans」も合わせて開発し、あらゆる媒体で同じ「ABEJAらしさ」が伝わる状態を作りました。このプロジェクトは2018年、創業6年目のタイミングで実施したものですが、ABEJAはその後上場を果たし、2026年現在も、当時定義したルールの骨格を保ったまま、ブランドを拡張し続けています。一度、拡張に耐えるルールを定めたことで、8年以上にわたって作り直す必要のない資産になりました。
このように、ブランディングは決して投資効率の悪いものではありません。むしろ、一度の投資が長期にわたって効き続けるという意味では、効率の良い投資の一つだと考えています。
だからこそ大切なのは、やるかやらないかではなく、適切なタイミングで、適切な投資をすることです。
どのフェーズでも、相談の入口はあります
同じ「ブランドをつくる」という仕事でも、フェーズによって、そもそも何を最優先で設計すべきかがまったく違います。私たちは、丁寧なヒアリングと事業理解を通じて、そこを一つずつ見極めながら設計しています。どの会社にも同じアプローチを当てはめるだけの会社ではありません。
貴社は、今どのステージにいますか。
そのステージだからこそ、デザインでお役に立てることが、きっとあります。